大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和45年(あ)1217号 判決

主文

原判決中、原審における訴訟費用について、「証人九鬼弥一、同大谷寛次に支給した分は被告人中嶋與の負担とし」とある部分を破棄する。

その余の部分に対する本件上告を棄却する。

理由

弁護人新垣進の上告趣意は、単なる法令違反、量刑不当の主張であって、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。

しかし、原判決は、原審における訴訟費用中、証人九鬼弥一、同大谷寛次に支給した分を被告人の負担としているが、右費用は、原審相被告人椎名登の第一審判決判示第六、一の事実のみに関する原審証人右両名の尋問について生じたものであるから、右椎名登に負担させることは格別、これを右の事実になんら関係のない被告人に負担させたことは、刑訴法一八一条一項本文の適用を誤ったものであり、原判決中、被告人に対し右訴訟費用の負担を命じた部分は刑訴法四一一条一号により破棄を免れない。

よって、同法四一三条但書により、原判決中、原審における訴訟費用について、「証人九鬼弥一、同大谷寛次に支給した分は被告人中嶋與の負担とし」とある部分を破棄し、被告人に右訴訟費用を負担させないこととし、その余の部分に対する本件上告は、前示の理由により、同法四一四条、三九六条に則り、これを棄却すべきものである。

よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 松本正雄 裁判官 田中二郎 裁判官 下村三郎 裁判官 関根小郷)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例